2020年6月22日月曜日

占術家出井房龍壱氏とのコラボ『心理学と占い』シリーズ(5)―最終回『信頼できる心理テストとできない心理テストとの違い』


 占術家の出井房龍壱さんとの『心理学と占い』シリーズもついに最終回となった。最終回は、『信頼できる心理テストとできない心理テストとの違い』がテーマである。出版されているのかどうかは知らないが、インターネット上には、信頼できない心理テストがワンサカと掲載されている。少しは心理学会からクレームがあってもよいと思うのだが、今のところ野放しのようだ。それで、ここでは信頼できる心理テストとできない心理テストの違いについて解説した。

 このタイプで最も多いのが、「これが何に見えますか」と質問して、その回答パターンによって性格や心理状態について推測するものである。これは、心理テストの中の投影法と呼ばれるスタイルで、何に見えるかという解釈に個人の深層が反映されるという想定で使用されている。インターネット等で紹介されているテストの作者は、投影法テストなら自分にも作れると思って倫理についてはほとんど無自覚のままやっているのかもしれない。しかし、信頼できるものとして実際に使用されているテスト、たとえばロールシャッハテストなどでは膨大なデータの蓄積がある。さらに、健常者だけではなく、統合失調症や神経症の患者などの臨床的なデータも豊富で、それがテストの妥当性と信頼性を支えているわけである。インターネットの投影法もどきには、もちろんこういう裏付けはない。

 信頼できないテストのもう一つの問題は、先行研究の知見の無視である。ユーチューブでお話したことは、2020317日の記事で書いた内容そのままなのだが、睡眠姿勢と男女の相性の関係についてのインターネットで見つけた心理テストの批判である。研究の作法として、先行研究の無視あるいは盗作は大きな倫理的問題なのだが、この種の心理テストでは無法地帯になっている。

 こういう批判に対していつも出てくる反論は、「このようなテストは、友人同士で楽しめばよい。つまらないことに目くじらを立てて水をさすな」というものである。しかし、過去に (あるいは今も?) 血液型と性格の関係が信じられてしまって人事考課等に使用されたという事実を踏まえると、やはり倫理的配慮が必要である。被暗示性が高い人はこういういい加減な心理テストで大切な友人や恋人を失うような可能性があると、十二分に考慮しなければならない。そこで私の提案である。現在、タバコにかなり注意喚起の文言が義務付けられているように、これらのいい加減なテストがインターネットや雑誌に掲載されるときは、次のような文言を義務づけるというのはどうだろうか。
「このテストは科学的裏付けがあるものではありません。使用することによって安易に他の人の性格を判断しないようにしましょう。」


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