2020年6月12日金曜日

占術家出井房龍壱氏とのコラボ『心理学と占い』シリーズ(4)―第4回『占いを求める理性』

 占術家の出井房龍壱さんとの『心理学と占い』シリーズも4回目を迎えた。3回目では、直感的(ファスト)な迷信等が一つ一つ熟慮的(スロー)な理性によって否定されてきたことを述べたが、4回目では、それでも理性は占いを求めているという私の考えを述べている。

 まず、占いや科学的根拠がない性格判断がなぜ信じられやすいのかについて説明している。これは、今ではどこにでも転がっている解説なので、新鮮味はほとんどない鉄板の「利用可能性バイアス(availability bias)」とバーナム効果である。前者について、最初に科学的用語として使用したのはカーネマンとトヴァスキーで、このYouTubeでの説明以外で有名な例は、Rが最初に来る単語とR3番目に位置する単語はどちらが多いかである。terminalserviceなど、英語には3番目に位置する単語が実際には多いのだが、それらはrememberrainbowと比較して思い出されにくく、ついつい最初に来る単語が多いという判断が行われる。「利用可能性バイアス」は、この認知的バイアスを説明するための概念である。つまり、最初に来る単語の利用可能性が高いわけである。YouTubeでは、これを、彗星が「現れる」「現れない」×災いが「ある」「ない」といういわゆる2×2の随伴表に適用している。彗星が現れてそのあと災いがあったりしたことがあると、それは記憶に残りやすい。つまり「彗星が現れる」と「災いがある」セルの利用可能性が高くなり、「彗星が現れると災いが起きる」と信じられるようになる。バーナム効果は、今では良く知られるようになったが、誰にでも該当するような曖昧で一般的な性格をあらわす記述で「あなたは~でしょう?」と言われると、「自分に当ててはまる」とか「自分の性格を言い当てられた」と感じてしまう現象である。悪用されないようにしなければならない。

 第4回のメインテーマは、「それでも理性は占いを求める」である。占いあるいは「神の声」の利点は、一言で述べると、不確実な状況で意思決定が必要な場合における自信や確信をもたらしてくれることである。そもそも現実に解決しなければならない問題の多くは、不良定義問題(ill-defined problem)であり、いわゆる計算困難性(computational intractability)を伴う。つまり、正解を知るためにものすごい数の可能性を検討しなければならず、それはほぼ不可能なのである。しかし、それでも何かを選択しなければならないとき、いくら不確実であっても、実行時には「えいっ」と自信をもっていなければ成功はおぼつかなくなる。占いは、こういう状態で後押しをしてくれるわけである。

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