2020年6月18日木曜日

遠くなった開城(ケソン)―金正恩と金与正は統一を危険視?

 私がケソンという地名を知ったのは、2005年に韓国に滞在したときである。ソウルのある大学で講演をし、その後に近くのレストランに連れて行っていただいたのだが、料理がとてもおいしかったことを記憶している。「ここの食材はケソンからの直輸入だから」とある先生が教えてくださったのだが、恥ずかしながら私は、「南国っぽくないけど、本当にフィリピンから輸入?」と勘違いしてしまった。当時、ケソン(開城)は、南北融和の象徴で、北朝鮮の食材はおいしいというのがソウルの人々の常識だった。ところが、2020年の616日、ケソンの南北連絡事務所は北朝鮮によって爆破されてしまった。

 素人の意見だが、やはり金一族は文在寅の太陽政策による朝鮮半島の統一は望んでいないのではないだろうか。2年前の板門店会談には驚いたが、金一族にとって統一における最大の問題は、統一されたときの自分たちの処遇だろう。いくら文在寅が、金の家系は抗日独立の最功労者であるとし、天皇あるいは貴族のような位置に置いたとしても、それで納得する人々がどれだけいるだろうか。そのような政策を推し進めるためには、韓国の反対派を徹底的に弾圧しなければいけないが、それはアメリカをはじめとする多くの国が黙っていないだろう。よほど中国やロシアに後ろ盾になってもらって文在寅もしくは「共に民主党」による独裁が続かない限り難しいだろう。また、北朝鮮の人々の中にも金一族の独裁に反対している人々は多いはずだ。とくに、収容所から解放された人々が金一族の象徴化を認めるはずがない (ただし、文在寅が、収容所の政治犯は犯罪時の法で裁かれるべきとして釈放しなければ、この心配はなくなる。脱北者による北への宣伝を法で取り締まろうとするほどの人間だから、それくらいのことはやりかねない)

 このように考えれば、金正恩や金与正が、かりに赤化統一であったとしても、その統一が自分たちの利益に反することは十分に認識しているはずだ。命まで奪われなくても、多くの財産は取り上げられることになる可能性が高い。さすがにアメリカに締め上げられたときは板門店会談に臨もうと考えたのかもしれないが、その後は、統一の妨害のために文在寅や韓国を激しく批判する機会を物色していたのだろう。激しく批判すれば、少なくとも金正恩や金与正を取り巻く人々の忠誠心を高めることもできるのではないだろうか。金一族は、チャウシェスクやホーネッカーにならないために、国内の引き締めに必死なはずだ。今回の南北連絡事務所の爆破は、そのための都合のよいショーだったのだろう。「政治が乱れた貧しい南が我々に縋りついてきたが、無礼なので連絡事務所を破壊した」、これに留飲を下げる北朝鮮の人々が何人いるのかはわからないが。

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