第4回Human and Artificial Rationalitiesにおいて私が個人的に気になったのは、不気味の谷現象についての発表が、心理学側からもロボットデザイン研究側からもいくつかあったことである。概して、ロボットなどのヒト型の模型は、人間に似ていくほど親近感が増すが、写実の精度が高まっていく先のかなり高度なある一点を超えると、違和感や薄気味悪さが観察者に急激に抱かれるようになる。そして人間と同じとみなされると再び親近感が増して不気味さが減少するので、人間との類似を横軸、親近感を縦軸にしたチャートにおいて、ちょうど谷のようになることから、不気味の谷現象と呼ばれている。
不気味の谷現象の要因として、人間らしさの期待からの逸脱、進化的回避、人間・無生物というカテゴリ上の曖昧さが考えられる。この現象の対策あるいは克服として、デザイン研究側からは、ロボットに人間の姿形を模倣させるだけでなく、嗅覚など人間の周辺領域の要素を取り入れた「周辺人間的(peri-human)デザイン」が提唱された。これは、適切な親近感を設計する手法のようだが、私は個人的には懐疑的だった。心理学側からは、対話を通じた認知的不協和の解消が提唱された。ソーシャルロボットと会話を交わすことで、ユーザーが覚える不気味さが軽減されると報告されている。ちょうど、近年の生成AIと会話して感ずる親近感をロボット相手にも適用していこうとするものだろう。
また、不気味の谷現象の心理的メカニズムを検討した帝京大学の實吉綾子先生の研究では、人工的な顔画像にいだく不気味の谷現象について、生成AIによる画像でも同様の不気味さが生じるのか、また人間制作の画像とどう異なるのかが検証された。視線計測(eye tracking)や脳機能計測(fNIRS)を用いて分析を行った結果、不気味さは画質・品質の低さといったボトム要因によって引き起こされる一方、主観的な感情評価への影響は軽微であることが示された。また、脳の前頭極が果たす社会的認知やカテゴリ分けの機能が、不気味さの認識に関与していることが示唆された。
今後、ヒト型のロボットはどのように使われていくのだろうか。兵士への代替にはかなり抵抗があるが、人間が行うには危険すぎる作業等が主要活躍領域だろう。また、労働力の不足にも対応することができ、介護などには必須になってくるのかもしれない。こうした場において、不気味の谷現象は、本当に克服すべきことなのか、私には判断できなかった。とくに、介護をしてもらうときには、運んでもらうときに落とされるなどの事故がないことが一番で、快適に介護をしてもらうときには、ロボットが不気味だろうか、違和感を覚えようが、あまり重要ではないような気がするのだが、どうだろうか。
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