米大統領のドナルド・トランプについては、さまざまな批判がある。以前から彼の排外的な発言が問題視されていたが、今期には、一方的な関税の通告、イランへの攻撃、さらにイランへの攻撃や合意などによる株価の乱高下を利用した株価売買など、これだけ世界を振り回した米大統領も珍しい。もちろん、イランについては、宗教独裁とテロ支援で、もしこの国が核兵器を手にしたら国際的テロ組織に拡散されるのではないかなどのリスクがあったかもしれない。政府に批判的な人々を次々に処刑するこの恐怖独裁国家をなんとかしなければならないという信念もあったかもしれない。しかし、ほとんど何の説明もない米国による攻撃は、ベネズエラへの攻撃での成功体験の結果ではないかとも思えてしまう。ちょうどプーチンのウクライナ侵攻が、クリミヤ併合の成功体験の結果のようなものだ。
以上の行動については、おそらく専門的な判断が必要で、ドナルド・トランプが愚かな金儲け主義者かどうかの断言まではできないかもしれない。しかし、今回のワールドカップにおける米国チームのレッドカードによる次戦出場停止処分を、大統領の圧力でひっくり返したという愚行は、おそろしくわかりやすい。サッカーでは、レッドカードによる退場者には次戦の出場停止という処分が下され、危険行為のレベルによって出場停止の試合が多くなる場合もある。このルールは、世界中のリーグにおいて守られ、当然ながらワールドカップ予選においても遵守されてきた。それが、ワールドカップ本戦の、ノックアウトステージ (決勝トーナメント) において破られてしまった。ベスト16を賭けたボスニアヘルツェゴビナ戦で米国のフォラリン・バログンは危険なタックルでレッドカードを受け、その試合で退場し、次戦のベルギー戦も出場の資格はなかったはずである。モナコに所属するバログンは、ACミラン所属のクリスチャン・プリシッチとともに米国のエースで、彼を欠くのは米国チームには痛かったかもしれない。トランプは、この決定をひっくり返すようにFIFA会長に圧力をかけ、結局その通りになった。そして、ベスト8を賭けたベルギー戦では、バログンは出場したが、米国は敗れた。
法律をはじめ何においてもそうなのだろうが、スポーツにおいてもルールを捻じ曲げる行為はやってはいけない。おそらくベルギー対米国戦では、世界のほとんどサッカーファンはベルギーを応援しただろう。わたしもそうだった。ここで米国が勝ってしまったりすると、おそろしく後味が悪い大会になってしまう。ドーピングに引っかかった自国選手を強引に出場させたりなどの愚行は、共産圏の独裁者がすることだと思っていたが、なんと世界の民主主義の牽引国だったはずの米国の大統領が行ってしまった。
この行為は、サッカー選手にあこがれる青少年に決して良い影響は与えない。いくら指導者たちがこれを反面教師として教育をしても、子どもたちは、「権力をもったものが正義」という裏ルールを敏感に感じ取るかもしれない。また、この件の最大の被害者は、出場を余儀なくされたバログンではないだろうか。私が彼の立場なら、おそらく出場しないと思うが、おそらく規則を守って出場しないことができなかったのではないだろうか。いずれにせよ、トランプの任期が早く終了することを待ち望んでいる。
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