2023年8月8日火曜日

自民党女性局のフランス研修―これを「外交」と呼んだら、真摯に「外交」に取り組んでいる人たちに失礼

  自民党女性局のメンバーが、少子化対策や子育て支援などの視察や意見交換のためにフランスを訪問し、エッフェル塔などでの「観光旅行風」写真が物議を醸しだした。当初は、私は、こういう写真をSNSなどで掲載したら観光旅行と思われて批判の対象になるということを予想できなかった想像力の欠如を感じたが、国際的な人的交流が必要な中、渡仏自体は問題がないと思っていた。

 この批判に対して、松川るい氏は反省の弁を述べていたが、今井絵理子氏は、「政治における女性参画について意見交換。国会議員の仕事で重要なものの一つが『外交』です。以前、こんな言葉を聞きました」と記し、「『内政の失敗は内閣を滅ぼすが、外交の失敗は一国を滅ぼす』。外交も人間関係の構築から始まります。だから私は度々、他国の人々と交流のためにその地を訪れます」と強弁していた。確かにその通りなのだが、私を含めて多くの国民が唖然としたのは、研修や交流の時間が6時間という短さだったことである。

 百歩譲って、この6時間のために、フランスの少子化対策や子育て支援について事前に学習し、かつ意見交換をフランスの政治家や彼らのブレーンたる研究者と行っていたならばそんなに問題はないかもしれない。しかし、事前学習の報道がないことから推察すれば、まずこれはほとんどなかったのだろう。

 フランスでの施策的成功が日本にそのまま取り入れられるのかどうかについては、さまざまな視点から考慮する必要がある。概して産業国では少子化が進んでいるが、日仏両国は、本当に共通の要因による少子化なのだろうか。また、日仏両国の文化および文化的価値観の違い、制度の違い、家族形態の違いなど、さまざまな差異を認識したうえで、フランスで行われている施策の取捨選択が必要になってくる。とくに家族形態について、エマニュエル・トッドによれば、日本は「父系直系家族」に分類されるが、フランスは、パリ盆地付近では「平等主義的核家族」だが南部では「直系家族」他とされている。家族形態の違いは、誰に最も子育ての負担がかかるのかという差異を生じさせるので、非常に重要な要因である。さらにそれ補完するように「制度」が決められるので、要因分析はますます複雑になってくる。

 このような作業が今井絵理子氏にできるのだろうか。当初、彼女が国会議員に立候補することが決まったとき、その資質についていろいろと疑問視されてきたという経緯がある。私には、まず無理だろうと思える。その今井氏が上述のセリフを吐いたとなると、彼女の辞書の中で「外交」という項目にはどんな意味が記載されているのだろうか。実際、貿易や平和・軍事のための外交は恐ろしくたいへんな作業なのではないかと思うが、今井氏は、自分が行ったこともこのようなレベルと同等と考えているのだろうか。今井氏が、自分の辞書の「政治」や「外交」の意味から、「だから私も政治家になって外交ができる」と考えていたのだとすれば、申し訳ないが、誰かがその辞書を書き換えて差し上げる必要があるだろう。

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