J1とJ2を行き来するエレベータークラブと言われながら、2011年にJ2に降格して以来、11年ぶりに京都サンガのJ1昇格が決まった。この11年間、惜しい時もありまた迷走した時もあったが、この春から指揮をとった曹貴裁監督のもと、見違えるようなチームになり昇格にたどり着いた。2019年には中田一三監督のパス&ポゼッションで面白いサッカーになったが、後半になって相手に研究されだすと勢いは止まった。2020年の實好礼忠監督がそれを修正したチームを作ろうとしたが、残念ながら不調に終わった。
曹貴裁監督のサッカーは、豊富な運動量に支えられた、ハイプレスで攻守の切り替えが非常に速いサッカーである。最も得意とする攻撃のパターンは、ハイプレスからボールを奪ってのショートカウンターで、この切れ味は抜群だった。しかし思い返せば、2008年のユーロ大会、2012年のワールドカップを制覇したスペインのパス&ポゼッションサッカーは華麗で見ていて面白く、かつ強かった。私は、これがサッカーの完成形で、当時はこれ以上強くなりようがないのではないかと思った。実際、同じようなスタイルのバルセロナやマンチェスター・ユナイテッドは、面白いようにパスが回るサッカーで相手を翻弄していた。しかし、このようなサッカーは、いくらボールを保持していても、決定力が弱いと縦に速い攻撃に脆い。とくに守備を固めてカウンターを狙われたり、ハイプレスをかけられたりすると、ボロが出てくる。現在、縦の速さのために最も組織化されているのはマンチェスター・シティではないかと思うが、攻守の切り替えが速く、攻撃時には一気に前線にボールが運ばれるサッカーは、非常にエキサイティングである。
ただし、曹貴裁監督が目指しているのは、マンチェスター・シティというよりはリバプールで、ユルゲン・クロップのサッカーを目標にしているようだ。リバプールと同じ4-1-2-3のフォーメーションで、両SBを高めにとり、アンカーに運動量があってボール奪取がうまい川崎颯太を置いている。3トップは、松田天馬、ピーター・ウタカ、宮吉拓実で、カウンター時には縦に速く、相手の守備が整った状態では、サイドからの崩しというのが基本のようだった。ただし、リバプールと比較すると3トップの破壊力が足りない。リバプールのサラー、マネ、ジョッタのような得点力は京都には欠けていた。松田天馬は、曹貴裁監督のサッカーを具現化するキープレーヤーだと思ったが、得点力という点では物足りなかった。むしろ松田には、2列目で動き回られるほうが、相手にとっては嫌なのではないかと思う。
来季は久しぶりのJ1である。強化部はすでにJ1で戦うための選手の補強に動いているようだが、来季はどのようなサッカーを見せてくれるのか、曹貴裁サッカーがどのように完成されていくのか、今から楽しみにしたい。
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