2021年4月19日月曜日

ミャンマーの軍事クーデター

  ミャンマーに突然の軍事クーデターが起き、すでに3か月近く経とうとしている。当初は、すぐに鎮圧されるのかと思ったが、国軍の多くが加わったクーデターで、反対するデモの人々を殺害したりして、軍による独裁化が進みつつあるようだ。メディアなどに対しても相当の情報統制が行われているようである。

 これで思い出したのが、ジャレド・ダイアモンドの『危機と人類』に書かれた、1973年のピノチェトによるチリの軍事クーデターとその後の軍事独裁である。このクーデターの背景には、その前の大統領であるアジェンデの、市場経済からの無理な社会主義的計画経済への移行によって起きた経済の破綻がある。私は、社会主義的計画経済とまではいかなくても、文在寅がかなり左派的な思想で経済政策にも失敗しているので、韓国がチリのクーデター前夜と似ているのではないかとちょっと心配していたが、今のところ大丈夫なようである。

 ミャンマーでは、ロヒンギャなどの少数民族の問題を抱えているものの、民主化も進み、経済的にも豊かになりつつあるので、軍事クーデターは意外だった。ミャンマーの場合は、この急激な民主化によって進みつつあったシビリアンコントロールに対して軍事勢力側が大きな危機感を抱いたことによるクーデターのようだ。当初は、国民の支持も得られない「窮鼠猫を嚙む」ようなクーデターは長続きするはずがないと思っていたが、デモを弾圧したり、スーチー氏を断罪したりで、独裁的支配を強めているようである。

 それにしても残念なのは、周囲の国々が、この事態に対して指をくわえているしかないという事態である。内政不干渉という原則があるのだろうが、国連の安全保障理事会が必死に停戦を勧告しても、軍事独裁政権は聞く耳を持たないようだ。この政権は、いくら国際的に孤立しようとも、ミャンマー国内で権力を維持できればそれでよしなのだろう。これは北朝鮮政権と同じで、経済制裁くらいではなかなか倒れないようだ。旧ユーゴスラビアでのように、国連軍が入って監視下に置くようなことができればまだ進展の可能性があるのだろうが、現状では無理なのかもしれない。デモの人々への弾圧を防ぐためには、何らかのリヴァイアサンが必要なのではないかと思う次第である。このままでは、民主化を願う人々の見殺しである。

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