2019年8月10日土曜日

カマキリの謎


 子どものころ、猛烈にカマキリを捕えたかった時期があった。私は小さいころから昆虫が好きで、捕えた虫を小学館の昆虫図鑑で調べるのが面白かったのである。その中で、強烈な憧れがあったのがカマキリである。なぜカマキリなのかと質問されても、明確な回答を返すことができないが、あの前足で被捕食昆虫をしっかりと捕えて食べる様子に、何か悪童の好奇心を刺激する残虐さがあったのかもしれない。

 しかし、このカマキリはなかなか見つけることができなかった。近所の竹やぶに、バッタやコオロギがたくさん生息していて、よくそこに虫取りに出かけた。ショウリョウバッタ、トノサマバッタ、オンブバッタ、エンマコオロギ、イナゴ、キリギリス、ウマオイなどはたくさん捕まえたが、カマキリはどうしても捕まえることができなかった。当時の昆虫図鑑には、オオカマキリ、コカマキリ、ハラビロカマキリが本州に生息する代表的な種類とされていて、実際に見たこともあったのだが、自分ではなかなか見つけることができなかったのである。なお、やや珍しいものとして、チョウセンカマキリやヒメカマキリがいるのだが、私自身は実際に見たことはない。ところが、小学校の低学年の頃だったと思うのだが、保育園の玄関の前でヒメカマキリを見つけた夢を見たのである。現物を見たことがないにもかかわらず、夢の中では、その大きさ(23cmと極めて小さい)から、ヒメカマキリに違いないと確信し、何とか捕まえたいと焦っているうちに目が覚めた。今でも覚えている夢なので、よほど印象に残っているのだろう。

 ある程度昆虫等についての知識、とくに食物連鎖についての知識を得るようになると、カマキリは昆虫の中では食物連鎖の頂点に立つので、ある程度十分な被捕食昆虫がいないと生息しないということが理解できた。そうすると、その竹やぶにはたくさんの被捕食昆虫がいたとしても、それでも少ないのだろうと納得していた。

 ところがである。決して広いとはいえないわが家の庭に、けっこうカマキリが出没するのである。被捕食昆虫としては、チョウやバッタが時々紛れ込むくらいで、けっして豊富とはいえない。また、子どものころに通った竹やぶに比べればはるかに狭い。それにもかかわらず、帰宅したときに家のドアにカマキリがとまっていたり、窓から家の中に入り込んできたり、子どものころの私だったら狂喜するようなことが何度かあった。つまり、私が子どものころにカマキリを発見できなかった理由を説明できるはずだった「被捕食昆虫不足説」はみごとに棄却されるに至っているのである。

 最近カマキリが増えているのだろうか? 温暖化の影響の一つだとすれば心配である。

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