2019年が始まった。このような節目において、未来の不確実性と世界情勢の不安がしばしば議論されるが、巨視的に見れば、第二次世界大戦以降、確実に殺し合いとしての戦争は消滅しつつある。このブログで何度も触れてきたことだが、殺人、暴力、ジェノサイドも減少の一途をたどっている。
戦争がほとんど起きなくなった理由はいろいろと考えられるし、このブログでもたびたび論じてきた。当然のこととしてこれまであまり触れなかった情報化について、少し述べてみたい。これまでの戦争は、基本的に相手の資源に代表されるモノの奪い合いで、たとえば太平洋戦争では、日本はスマトラ等の石油が欲しくて軍を進めている。しかし、現代の豊かさの基盤は、モノから情報にシフトしている。豊かさの鍵は、いかにすぐれたIT機器やプログラムを作成するかに左右されるようになっている。仮に、メキシコがアメリカに戦争を仕掛けてテキサスの油田を奪ったとすれば、自国が少しは豊かになるかもしれない。しかし、現代ではそれ以上の豊かさを生み出すのが情報である。かといって、メキシコがハイテク産業の集積地であるシリコンヴァレーを奪ったとしても、ハイテク企業や研究者に逃げられてしまえば得るものはほとんどない。戦争において実力行使によって奪える利益が、相対的に益々低下しているわけである。
これは、流血がないということで人類とっては喜ばしいことなのかもしれないが、現代では、私たちには想像もできないような情報戦が起きているようだ。中国のIT企業であるファーウェイのCFOがスパイ疑惑ということで、カナダで逮捕されたが、この真相はどうなっているのだろう。これまで、何人かの海外の知人から、IT技術が劣っていることを自認している中国は必死に技術を盗もうとしているのではないかということを聞いた。経済力をつけた中国が、情報戦で優位に立ったら本格的に牙を剥くかもしれないと恐れている人は多い。日本はのほほんとしすぎかもしれない。
何年か前に、コンピュータ開発の予算削減をめぐって、「2位じゃだめなんですか」という某政治家のセリフが有名になった。この発言の経緯について、私はよくわからないが、個人的には「だめ」だろうと思う。現在、コンピュータ技術は、情報共有やデータ解析などを通して、すべての学問分野の発展の基盤となっている。もちろん現代の豊かさの源泉でもあり、また災害発生のメカニズムなどを知るのにすぐれたコンピュータは欠かせないはずだ。コンピュータ技術が軍事に転用されるといわれると抵抗を感ずるが、流血の抑止としては、核よりははるかに健全なのではないかと思う。
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