2018年5月3日木曜日

「西郷どん」の視聴率低下―感情の押し売り?


 NHK大河ドラマ「西郷どん」の視聴率が低下している。これまでの大河ドラマの面白さと視聴率は必ずしも一致しているわけではないが、「西郷どん」については、私の中でも評価がちょっと下がりつつある。その大きな理由は、21日の記事、
でも触れたが、何かが余っているからである。

 西郷は、かなり感情が豊かな人物であったらしいことは、司馬遼太郎の「翔ぶが如く」をはじめとするいくつかの評伝で記されている。その感情エネルギーが人々を引き付けて、そのことが、明治維新最大の功労者の一人になったこととも、西南戦争で暴発した人々に身を任せたこととも結びつくだろう。

 しかし、「西郷どん」では、西郷の感情面を描き過ぎではなかろうか。感情豊かであるということを示すような、史実と関係がないようなエピソードがこれでもかこれでもかと登場すると、少々うんざりしてしまう。たとえば、「ふき」という架空の少女を登場させて、彼女の貧困に対しておそろしく同情を示すエピソードを入れたり、井伊の刺客を殺してしまったことで延々と涙を流す場面があったりと、これだけ西郷の感情がほとばしるシーンを見せられると、「優しさ」の押し売り感を拭い去れないのだ。

 好みもあるだろうが、歴史ドラマは、むしろ淡々と叙事的に物語を運ばせたほうが凄みが増す場合もある。あくまで歴史的できごとを叙事的に描くという手法をとり、主人公をはじめとする登場人物の心の中は、視聴者の想像にまかせるわけである。視聴者側にも、登場人物がどのような感情を抱いているのか推測する楽しみが残される。「おんな城主直虎」にしても「真田丸」にしても、感情を発露させるシーンは比較的少なく、俳優たちが表情だけで心中を表現しているのが印象的であった。名優と呼ばれる俳優は、演ずる人物の微妙な感情の動きから、自分で自分の感情がわからないという状態までも巧みに演ずることができるはずなので、「西郷どん」でもそれを脚本や演出でもっと活かして欲しいものだなと感じている。

 私の中で評価が高い1990年の大河ドラマである「翔ぶが如く」も、叙情的というよりは叙事的であった。しかし、それでも実は非常に違和感を抱いたシーンが記憶に残っている。それは、鹿賀さんが演じた大久保利通が、それまで不俱戴天の仇のようであった島津久光に取り入ろうと決心した時のモノローグである。ドラマでは、久光が好きな囲碁を学んで、久光に近づこうという決心を、その場にいない西郷にモノローグ的に語るというシーンだったと記憶している。この決心は、わざわざモノローグにする必要がなく、感情を殺して久光の側近になろうとしたほうが、凄みがあったのではないかと当時残念に思った。すでに30年近く経つが、今でもこの感想は変わらない。

3 件のコメント:

  1. どう思われますか2018年5月14日 10:40

    こんにちは。カテ違いで初歩的なコメントで申し訳ありませんが、(④を導く根拠に①②を用い、③は④を補強)、どのように思われますか。

    ① 『遺伝子DNAは誰が作ったのか』

     地球上の全ての生命に遺伝子DNAが組み込まれていますが、1mとか2mとかの長さがあり、4種の塩基配列は複雑精巧で、自己修復機能まで有します。

     こんなものが自然や偶然に出来るわけが有りません。作ったのは「遠い未来の人間」です。

    ② 『物質(原子)は誰が作ったのか』

     地球上の物質(原子)は百余り有りますが、陽子・中性子・電子の3者で構成され、それ以外の構成は存在しないし、規則性とか法則性に支配されています。

     中性子は中性子線を内包し、特定の物質(原子)もα線とかβ線などを放射して崩壊し、電子は電荷を内包しています。

     こんな複雑な物が自然や偶然で出来るわけが有りません。原子を作ったのは「遠い未来の人間」です。

     (uクォークとかdクォークとか中性子のβ崩壊で発生する陽子や電子ニュートリノなどの難しい話ではなく、単に『こんなもの(原子)が自然や偶然に出来上がるものか』ということを、お尋ねしております。)

    ③ 宇宙の始まりが無機であったとしても、進化の途上で有機(生命とか生活機能)が生まれ、さらに彼らが多様な進化を遂げたうえで、人間や様々なものが作り出された可能性は否定されるものでしょうか。

     (胎児の成長過程で一時的に見られる「尾っぽ」とか「指の水かき」は進化の記憶でしょうか。)

    ④ 『私たちは人工的に作られた肉体を使って、人工的に作られた「場」で生活をしていますが、実は、今の世界は実在しない虚構であり、実在する本当の自分は「DNAや原子を合成する科学を持った遠い未来」(真実の世界)にいます。』という発想は、(無限回の問答は抜きにして)、成り立つでしょうか。

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  2. 7回目の終了です(その3)2018年5月14日 10:41

    こんにちは。いつも興味深く拝見しております。ところで、「終末予言」について、ご興味をお持ちでしょうか。

    世は、七度の大変りと知らしてあらう。(黄金の巻 第26帖)

    世はグルグルと七変り、改心の為 世界の民皆、今度は引上げ一旦みなあるぞ。(黄金の巻 第71帖)

    ★(追記)
     上記以外にも、シリウスファイルのオコットのメッセージ、ヒトラーの予言、エズラ黙示録、ヨハネの黙示録(外典)、マザーシプトンの予言、ビリーマイヤーの予言、その他の予言などにも類似性や関連性が認められます。

    どう思われますか。

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  3.  コメントありがとうございました。

     難しい問題ですね。周期表にある物質とその構造は、もう所与とするしかないのではないでしょうか。無機から有機、有機からDNA、たしかに不思議なことは多いですが、一足飛びになにかオールマイティを仮定するのは行き過ぎと思いますし、反証可能な仮説になりえません。

     また、終末論については勉強しているわけではありませんが、人類が滅びる可能性はゼロではないと思います。あと1万年もすれば次の氷期が来るでしょうし、また、小惑星の激突、外輪山大規模噴火など、人類の存亡を危うくする因子は少なくありません。それが予言できるというのは無理があります。

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