4月28日、V・ファーレン長崎がJ1に昇格したことによって、Jリーグにおいて、初のサンフレッチェ広島と長崎の対決があった。この試合は、被爆地対決として平和祈念マッチあるいはピース・ダービーとして盛り上げられたが、とても良い試みだと感じた。3月16日のブログで、イングランドのフットボール(英国では、サッカーとは言わない)文化の厚みについて述べたが、日本のサッカー文化も、こういう活動を通して地域に根付いたり、海外にアピールしたりすることができたりすればと思う。
原子爆弾の被害の甚大さについてはここで書く必要がないほどいろいろなところで語られている。しかし、それが日本人のみならず世界の人々に伝わっているのかというと、まだまだ心もとない。先日も、野球の試合で、広島カープに対して、「原爆落ちろ」というヤジがとんだということがあったが、依然としてこういう冗談が発せられていることが悲しかったが、同時に、非常に大きな反響も呼び、冗談でも許されるべきではないという認識が広まっていることにはほっとさせられた。
私たちが原子爆弾の禁止を訴えていく点で、さまざまな問題がある。一番大きな問題は、大国あるいはいくつかの好戦的な国が核を保有している現状で、どのように訴えていくべきかである。私は、専門家ではないので、どうすべきなのかはよくわからないが、このような現状を踏まえずに政治運動化してしまった核廃絶運動には全面的な賛成はできない。
平和学という領域の人たちと本格的に話す機会をもったのはもう10年以上前である。残念ながら、日本で平和学というと政治運動化しやすい。しかし、世界で研究されている平和学では、現代の平和をどのように評価し、どのようにして達成されてきたのかという問題や、文化摩擦を生む要因は何なのかという問題を、冷静に分析的に検討するという手法が中心である。例えば核による戦争抑止が、実際に効果があるのかという分析も行われている。この点については、2017年11月26日の「改憲論議の前に」でも述べている。
平和祈念マッチは、政治的運動からは距離をおいて発展させて欲しい。日本人が、単なる被害者であるということを超えて、いかに強く核廃絶を願っているのかということを、平和学を研究する人々に理解して欲しいし、このような声が世界中に拡散していく中で、核に関心がなかった人々が真剣に核の被害について考える機会になればと願っている。しかし残念ながら、インターネットで調べてみたが、この平和祈念マッチはあまり世界には届いていないようだった。ぜひ、英文で発信して欲しいものだ。