2017年10月20日金曜日

洞窟壁画

 一度この目で見たいものの一つに、約25千年から15千年前の間に、スペインのアルタミラ洞窟やフランスのショーヴェ洞窟で描かれた洞窟壁画がある。非常に生き生きとしたトナカイなどが描かれているらしいのだが、洞窟の中で、これを描いた人は何のために何を考えながら描いたのかを想像してみたいのである。

 ただしこの洞窟画は、約1万年余り前には描かれなくなっている。私は、この理由を東からの農業技術を伴った巨石文化の伝播によるものなのかと想像していた。ただし、このあたりに農業が伝わったのは6千年前なので、だいぶタイムラグがあるが、ただ単にその間の洞窟壁画がまだ見つかっていないだけかもしれないと思っていた。

 私は、巨石文化の一端を、英国のストーンヘンジで見たが、その荘厳さに圧倒された記憶がある。洞窟壁画を描いていた狩猟採集民には、巨石文化を伝えた農業技術集団ははるかに豊かに見えただろうし、おそらく巨石と比較して洞窟壁画がみすぼらしく見えたのではないかと想像していた。ちょうど、幕末に黒船に代表される西洋文明に圧倒され、同時に、チョンマゲというなかなかおしゃれなファッションを廃止してしまった日本人のようなものではないかと思ったわけだ。

 ところが最近、イアン・モリスの『人類5万年 文明の興亡』を読んでいて、それがどうやら誤りだと気がついた。描かれなくなった理由は、15千年前の気温の上昇にあるらしい。ちょうど氷河期が終わりに近づくころであるが、この温暖化で、狩猟採集民がトナカイを追って北へ移動したようである。するとトナカイを描く人はいなくなり、また洞窟の灯りに使われたトナカイの獣脂も入手できなくなって、洞窟壁画の描き手がいなくなったというわけである。また、彼らが移動していった北欧には、スペインやフランスにあるような鍾乳洞がほとんどなく、移動先で才能を発揮することもできなかったようだ。

 ストーンヘンジを見たのは9年前の2008年だが、9年間考えていた誤りがやっと訂正されてほっとした気持ちである。しかし科学的発見や説明に絶対はない。ひょっとしてトナカイだけが消えた7000年前の壁画がどこかで埋もれているかもしれない。とりあえずストーンヘンジで撮った写真を張り付けておこう。

0 件のコメント:

コメントを投稿