2017年10月16日月曜日

おんな城主直虎



 昨年、HNK大河ドラマの「真田丸」が終了し、大きなロスに陥っていた。正直言って、その時点で今年の「おんな城主直虎」には期待していなかったのだが、これが、非常におもしろい。歴史素人の私には、史実についてはよくわからないが、昨年の真田丸と同様に、戦国時代の小領主にどのような苦難があったのかというリアリティも伝わってくる。そして、各登場人物の心理描写が丁寧で、それを演ずる俳優がそろって役者である。


 今年の大河の特徴は、それぞれの俳優の顔の表情のすばらしさであろう。さまざまな人間関係の中で、愛情、信頼、安堵、憎しみ、軽蔑など、そのときどきの感情をどれか一つに絞るような描き方がされておらず、そのような複雑な感情を見事に役者として表現しているように思える。さらに、会話等の中で、微妙な感情の変化を、表情のちょっとした変化で、視聴者にこれだけリアリティ感じさせながら表現できているドラマや映画にはめったにお目にかかれるものではない。直虎を演ずる柴咲コウや南渓和尚を演ずる小林薫の安定した演技は言うまでもないが、脇役に至るまでほとんど手抜きがない。


 顔の表情という点で、対照的なのが2012年の「平清盛」である。平安・鎌倉当時のリアリティを出すとかという演出で、建物の中が暗くされ、顔の表情がほとんどわからなかった。清盛の父役の中井貴一など、表情だけで演技ができる名優がそろっていたにもかかわらず、それをほとんど味わうことができなかったことは非常に残念であった。

 今年の大河でブレークした俳優は、高橋一生であろう。私が彼に初めて注目したのは、2007年の「風林火山」である。彼は、武田家家臣の駒井高白斎を演じていたが、かなりの年配者のはずの駒井を若い一生が演じるという違和感もあったが、おそろしく落ち着き払った文官を年齢不詳の能面のような表情で演じていたという強い印象が残っている。直虎においても、小野政次の感情を役者として表現するのが巧みなだけではなく、正次が自分の感情がわからなくなっている状態をもうまく演ずるという役者としての凄みが伝わってくるように思える。

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