2023年12月21日木曜日

京都サンガ2023年シーズンの統括

  京都サンガがJ1に昇格してから、今年は2年目のシーズンであった。昨シーズンはプレーオフで辛うじて残留できたことと比較すれば、今シーズンは最終節前に残留を決め、結果的には13位だったので力がついてきたといえるだろう。

 正直、J11年目である昨シーズンは、J1というよりは、J1.5あるいはJ2レベルの選手が多かった。チーム全体としてもJ1.5であり、強いチームに真っ向から立ち向かうという爽快さはあったものの、力の差は大きく、また、相手選手に、いわゆるチンチンにされることがたびたび見られた。しかし、今シーズンは、川崎颯太、福田心之助、金子大毅などの個々の選手のレベルアップが見られ、全体的にJ1レベルの選手が揃った。とくに金子大毅は、昨シーズンは、スペースのカバーなど、全体を見渡したプレーはできるのだが、足元の技術はおぼつかないという印象だった。しかし今シーズンは、アンカーを任され、ボランチとしてのかじ取りと相手ボールの奪取がレベルアップし、サイドや縦に長短のキラーパスを繰り出せるようになった。最終節の横浜マリノス戦で見せたFWの豊川雄太への一瞬の縦パスは、豊川の見事なゴールに結びついている。また、福田心之助は、開幕戦で見たときは極めて心もとなかったが、非常に攻撃力がある右SBとして成長している。

 また、今シーズン途中加入の原大智とク・ソンユンの存在は、残留という点で大きかった。京都は、昇格の立役者のピーター・ウタカの後釜としてガンバ大阪からパトリックを迎えたが、彼は決定力があるとはいえ、シーズンを通してのプレーが難しかった。しかし、夏に加入の原大智は、デビュー戦こそ存在感が薄かったものの、京都のサッカーに慣れてくるとパフォーマンスが安定してきた。ゴール前でのポストにもなり、器用な足元でDFを剥がしたり、パスを受けてのダイレクトであったりとシュートがうまい。また、昨年の正GKである上福元が移籍し、昇格時に正GKであった生え抜きの若原智哉が伸び悩み、海外からの鳴り物入りGKが全く試合に出場できない中、J1にしろJ2にしろ、出場経験がほとんどなかった太田岳志が奮闘して、降格を免れる功労者の1人になってくれた。しかし、やはり太田では心もとないと思っていたら、札幌からク・ソンユンがレンタルで来てくれた。彼の加入後は、守備が安定し、また、一発のロングフィードが京都の大きなチャンスにもなるなど、終盤の好調を支えてくれた。2024年シーズンのク・ソンユンの完全移籍という情報もあるが、ぜひ実現して欲しい。

 今年が3年目だった曹貴裁監督のサッカーは、豊富な運動量に支えられた、ハイプレスで攻守の切り替えが非常に速いサッカーである。FWさえも前線からのプレスを求められるという、選手にとってはハードな戦術だが、現代サッカーの特徴である、全員攻撃全員守備と縦への速さを追求したサッカーになっている。ここであげた選手はこのサッカーに非常にうまくマッチしていると思う。昨年までは、京都の怖さはボール奪取からのカウンターのみだったが、今シーズン途中から、守備を固めた相手に対してサイドからの崩しが加わった。また、セットプレーからの攻撃も冴えるようになってきた。京都は、現時点でサッカーファンなら誰もが知っているというスター選手がいないが、地味ながら確実に進歩が見られる面白いチームになっている。今から2024年シーズンが楽しみである。

 

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