2022年3月8日火曜日

運命は変えることができる?(2)―後知恵バイアスなど

 前回の投稿で、私の言説を週刊現代の記事で取り上げていただいたことを書いたが、実は、それに載せることができなかった話題もある。この点について、記者の方からお詫びをいただいたが、それは後知恵バイアスと運命の関係についてである。

 後知恵バイアスとは、何かが起きた時に、実は予想していなかったにもかかわらず、これは予想できていたことだと思ってしまうバイアスである。このバイアスは、予想外の事象が起きても、無意識のうちに心の中にそれを予想できるような因果関係が形成され、「予想できていなかった」過去を想起できなくなってしまうことによって生ずる。この後知恵バイアスによって、実はかなり運命が変化したにもかかわらず、その変化という結果をあたかも予想できていたかのように思ってしまう可能性が生じてくるわけである。そして、自分で運命を変えたことを気づかずに、「これが運命だった」と思い込んでしまうことになる。

 この「運命」という思い込みは直感的で、概して直感的な信念は修正されにくいので、この思い込みも修正されにくい。そうすると、「自分は~のように運命づけられている」と信じ込むと、それが実現する力になる。すでに古典的となっている研究だが、1999年に発表された、マーガレット・シー (Margaret Shih) たちの論文は、興味深い事実を報告している。女性は数学に弱いというのは、真実なのかどうかはまだまだわからないが、多くの人に信じられている。それに加えて米国では、語学のハンディがないためなのか、あるいは民族として得意なのかわからないが、中国人は数学が強く、かつそのようなステレオタイプが共有されている。彼女らの研究から、中国系アメリカ人女性に、女性としてのアイデンティティを強調すると数学の成績が悪くなり、中国人としてのアイデンティティを強調すると良くなるという結果が得られている。つまり、アイデンティティの強調は、「数学が得意という運命」または「不得意という運命」を感じさせることになり、その「運命」を自分でたどることによって、このような結果が得られたのだろう。

 逆説的だが、「これが運命だ」と直感的に感ずることが、元々の運命を変えていくことができる最も大きな力のかもしれない。

文献

Shih, M., Pittinsky, T. L., & Ambady, N. (1999). Stereotype susceptibility: Identity salience and shifts in quantitative performance. Psychological Science, 10(1), 80-83.

関連記事

運命は変えることができる?(1)―週刊現代の記事から

法廷での後知恵バイアスについての論文を新聞記事で紹介していただきました (1)

1 件のコメント:

  1. 中国による尖閣侵攻危機と、憲法改正の必要性を知って下さい

    書込み大変失礼致します。
    皆様にこの度どうか知って頂きたい事があり、誠に恐縮ですが書込ませて頂きました。

    テレビが大きく報じぬ中、連日尖閣奪取を狙う、中国の日本領海侵犯が激しさを増す現状を、中国に侵略虐殺を受けるウイグル等と重ね、どうか多くの方に知って頂きたいです。

    かつて9条の様に非武装中立を宣言し、平和的で軍事力の弱かったチベット等は、中国に武力で侵略虐殺され、その覇権拡大は現在進行形で行われています。

    韓国が日本の竹島を不法占拠した際、多くの船員が機関銃で襲撃され死傷し、北朝鮮には国民を拉致され、
    尖閣には中国公船が侵犯する現状でも、9条により日本は国を守る為の手出しが何一つ出来ません。

    中朝ロの数千発の核ミサイル標準は常時日本に向けられており、尖閣、台湾周辺の動きも激化する中、9条を改正し自立した戦力を持たなければ、
    有事の際、敵基地攻撃能力を持たず、原発も止まり資源の無い現状防衛力では、日本人の命と領土は守れません。

    中韓による侵略は、メディアや野党が法制化を目指す、外国人参政権や夫婦別姓等からも始まっており、
    外国人参政権はアメリカ始め世界でも認める国は少なく、

    ハワイは米国に外国人参政権を与え乗っ取られ、ウクライナのクリミア半島も住民投票を行った体でロシアに帰属しました。

    又夫婦別姓等も元々は中韓の制度であり、地位の低い女性は夫の姓を名乗らせないという、女性蔑視の歴史的背景によります。

    この夫婦別姓は最終的に戸籍廃止を目的としており 、戸籍により追跡発見が出来た
    背乗りやスパイ等の犯罪も、これを無くす事で不都合な出自隠蔽も容易となります。

    先進国で唯一スパイ防止法が無い日本で、
    中韓に軸足がある野党やメディアが、制度の危険性を隠し国民を誘導する現状からも、既に浸透工作は最終段階である事、
    日本でウイグルの悲劇を生まない為に、一人でも多くの方に目覚めて頂きたいと切に思い貼らせて頂きます。
    https://pachitou.com
    長文、大変申し訳ありません。

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