2022年3月7日月曜日

運命は変えることができる?(1)―週刊現代の記事から

 週刊現代の記者の方から、心理学の立場から「運命を変えることができるのは何か」というお題をいただき、そんなに大きな記事ではないが、37日発売号で取り上げられれているようだ。当初は、このお題に非常に戸惑い、そもそも「運命」をどうとらえるのかということから議論が始まった。

 とりあえず、「運命」を、「さまざまな個体・状況要因から予想される最も蓋然性が高い帰結」として、それを変えることができるのは何なのかということで考えてみた。おそらく、このお題が与えられれば、多くの人は自分の運命はどこで大きく変化しただろうと思案し、何が「大分岐」だったかを思い出そうとするのではないだろうか。受験の成功・失敗、影響を与えた人や書物との出会いなど、人によってさまざまだと思う。

 私は、そういった個人的体験を支える重要な精神的要素として、レジリエンス、自己効力感、楽観主義を指摘した。受験の成功などの偶然的要素は、いわば棚から牡丹餅みたいなもので、むしろ重要なのは、その牡丹餅を受け止めることができる能力である。また、人によっては、大きな苦難の後、成長できたと考えているかもしれない。この能力や成長を支えるのが、この3つで、互いに関連しあいながら影響を及ぼしている。

 レジリエンスは、精神的な回復力で、苦難や挫折などの困難を経験しても、そこから立ち直ることを可能にしてくれる。切り替えの速さと解釈できないことはないが、おそらく真のレジリエンスは、悲しみから単に目をそらすのではなく、それを自分の中でかみしめた上でのそこからの成長を意味すると思う。苦難の後に大きく成長できるのは、このレジリエンスが高い人である。

 また、運命を切り開くには自己効力感が大切である。自己効力感とは、目標を達成する能力を自らが持っていると認識することで、成功体験を重ねることができれば、効力感は大きくなると考えられている。いわゆる「やればできる」という感覚である。逆に、失敗体験が多いとこの効力感は小さくなるが、楽観主義的な人はそうならない。なぜならば、彼らは、失敗しても失敗しても、次は成功するという楽観的な信念をもつ度合いが大きいからである。よく言われる例として、保険の外交員は、楽観主義的な人でないと務まらないとされている。なぜならば、保険の勧誘は、そのほとんどが断られるが、それでもめげずに次の家のドアフォンを押さないといけないからである。今度こそ、今度こそ、と思いながら次にチャレンジする精神を支えているのがこの楽観主義である。

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