日本学術振興会国際共同研究加速基金(B)に採択され、” Dual Process, Moral Reasoning, and/or Religious Belief”というタイトルで、2022年3月17日、18日にキックオフシンポジウムを行った。海外拠点はフランスのツール大学で、もし新型コロナが終息していれば、ツール大学に滞在し、そこでシンポジウムを行う予定であった。しかし、それが不可能ということで、昼間に日本語セッション、夕方に英語のセッションを設けて、対面およびウェブのハイブリッドで行った。科研のタイトルは、”Religious moral reasoning in the frame of dual process approach: Cultural differences in religious moral reasoning and thinking style”というものなのだが、実は、”religious moral reasoning”について、私を含めて科研のメンバーはまだあまり研究実績がない。私たちは、これまで直感的システムと内省的システムを想定する二重過程理論やモラル推論などの関わる研究を行ってきたのだが、未解決の問題を考えていくと、宗教にたどり着いたというわけである。したがって、私たちの研究プロジェクトは、「宗教を」研究するのではなく、「宗教を材料として」二重過程理論の問題を解明していくことが目的となる。
出発点は、二重過程理論における論争で、内省的システムが直感的システムの現代社会における非適応的な出力、すなわち認知バイスや迷信、過度の自己中心性、暴力的衝動など制御できるのかという問題である。その問題について、宗教は、非常に興味深いテストケースを提供してくれる。つまり、例えば、頭(内省的システム)では迷信とわかっていても、直感的システムは悪霊の呪いは怖いと判断するというわけである。このプロジェクトは、この共存がどのようにして起きているのか、そしてそれには文化差があるのかという問いかけをしている。そしてこの問いは、現代社会における、科学と宗教の両立にも関係してくる。以下がプログラムである。なお、両日の英語セッションと石井辰典先生の基調講演は、後日ビデオ公開の予定である。
3月17日
11:00-11:30 山祐嗣 (大阪市立大学) 本プロジェクトの概要
11:30-12:30 山祐嗣 (大阪市立大学) 東洋人の弁証法と二重過程理論
13:30-14:30 前田楓 (日本学術振興会)・橋本博文 (大阪市立大学) タイムプレッシャーが囚人のジレンマゲームにおける集団内協力行動に及ぼす効果
14:30-15:30 橋本博文・前田楓・松村楓 (大阪市立大学) タイムプレッシャーが道徳ジレンマ状況における意思決定に及ぼす効果:文化特定性についての探索的な検討
英語セッション
16:00-16:15 Yama, H. (Osaka City
University) Outline of Project
16:15-17:15 Majima, Y. (Hokusei Gakuen
University) Dual process of thought behind the epistemically suspect belief.
3月18日
10:00-11;00 山本佳祐 (大阪市立大学) 援助行動に対する動機推測の心理機制―利己的と解釈する第三者の心理
11;00-12:00 中村紘子 (東京電機大学) 論理的推論における宗教的信念バイアスの検討
13:00-14:00 山愛美 (京都先端科学大学) 宗教的であるとは?―文化的・心理療法的視点から
招待基調講演
14:00-15:30 石井辰典 (早稲田大学) 宗教的信念の適応的機能を探る:宗教の認知・進化科学からの示唆
英語セッション
16:00-17:00 Bentahila, L. (University of
Tours) Universality and cultural diversity in moral reasoning and judgment: a
case study of France and Morocco through a developmental approach.
17:00-18:00 Salvano-Pardieu, V. (University
of Tours) Do role-playing and argumentative debate help preschool pupils better
understand social interactions and develop System 2?