2018年10月14日日曜日

中国の脅威と人権問題―なぜ日本のメディアは問題視しない?

 なぜ韓国の左派系の新聞にしても、日本のメディアにしても、中国の脅威についてはトーンが低いのだろうか。日本で中国の脅威を述べたりすると、感情的な嫌中や嫌韓と同一視されるというリスクもあるが、日本の場合、日中戦争や太平洋戦争の加害国という負い目も大きく、侵略を反省しない歴史修正主義者とみなされることが嫌なのだろう。

 しかし、習近平が国家主席になって以降、中国の脅威はさまざまな形で現れるようになっている。最近の米国の中国に対する圧力は、日本ではまたトランプの横暴が出たのか程度の認識のメディアが多い。しかし、米国のペンス副大統領の104日の講演では、経済だけではなく、安全保障分野でも、中国に「断固として立ち向かう」いう主張が行われている。現代の戦争はITが勝敗のカギを握るが、その分野の遅れを自認している中国政府は、米国をはじめとする世界の知的財産をあらゆる手段を使って入手するよう指示しているようだ。

 南シナ海での東南アジア諸国への軍事的圧力も無視できないが、より重大な問題は人権抑圧だろう。1989年の天安門事件は知られているかもしれないが、新疆ウイグル、内モンゴル、チベットにおける人権抑圧については、まだまだ一般には知られていない。先日、新疆ウイグル自治区において、イスラム教徒への再教育キャンプについての報道があった。過激派の取り締まりが目的とされてはいるが、実質は、人権運動家・独立運動家の収容所送りである。また、内モンゴルの問題については、楊海英による『墓標なき草原:内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録』に詳しい。さらに、香港の雨傘運動(民主化運動)に対する弾圧も、その圧力を増しつつある。

 また、インターポールの総裁である孟宏偉が、インターポール本部があるフランスのリヨンからの帰国後、中国当局に身柄を拘束されているようである。理由はまだ私たちにはわからないが、リヨンというと私の記憶の中に引っかかるものがある。以前、日仏共同研究のプログラムの共同研究の相手がリヨンの研究所だったという理由から、リヨンには数回滞在している。その時に、リヨンでは中国政府への反政府組織が活発という印象を受けた。今はどうなっているのかわからないが、当時、街のところどころに中国政府によるチベット弾圧への批判のチラシが貼られていた。あるとき、私がそのチラシを眺めていると、近くにいた東洋人がこちらを見ていて、私が彼のほうに視線を移すと、彼は足早にそこを去っていった。よく考えれば、東洋人である私は中国人と間違えられる可能性は大きい。もしその男が当局側で、私を反政府組織の一員と疑ったらしばらくは尾行がつくのではと心配したが、幸いそれはないようだった。すると、可能性が大きいのは、その男が反政府組織の一員あるいはそれへのシンパであり、東洋人である私を当局側と疑ったことかもしれない。

 リヨンでの一件は今となっては知る由もないが、中国の反政府組織は世界の至る所にあるのかもしれない。孟宏偉の拘束は、おそらく習近平の意に沿わなかったことが理由であって、リヨンの反政府組織とは無関係だろうとは思うが、何やら気になる符合ではある。

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